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この国債買い切りオペは、10月29日をもって予定通り終了した。
買い入れ総額は3000億400万ドルと、ほぼ当初の予定通りである。
筆者は、FRBの国債買い切りオペ終了と同時に、アメリカの長期金利が上昇するのではないかと危惧していた。
とはいえ、少なくとも09年末までは、同国の長期金利は2・5%前後を行き来しており、金利高騰の兆候は見せていない。
09年12月8日。
大手格付け機関のムーディーズは、世界的な金融危機の影響で、政府の財政が急速に悪化したことから、アメリカ及びイギリスが最高格付け(Aaa)の「限界」を試す可能性があるとの見解を示した。
「最高格付けの限界を試す」とは、また微妙ないい回しだ。
個人的には、民間の資金需要が縮小し、バランスシート不況に陥った以上、アメリカの長期金利が上がる(アメリカ国債の価値が下がる)可能性は低いと考える。
とはいえ、アメリカの場合は日本と異なり、政府による海外からの資金調達が多い部分がリスクではある。
特に、世界の基軸通貨たるドルの行方によっては、米国債のリスクが一気に高まる危険性がなくはない。
何しろドルと米国債は、互いが互いの価値を支えあう仕組みになっているのだ。
そもそもドルが基軸通貨の地位にあるのは、最高格付けの米国債がドルで売買され、金利が支払われるためであり、米国債が最高格付けを維持しているのは、もちろん世界の基軸通貨であるドルで売買されるためなのだ。
問題は、そのドルである。
ドルの増加とFRBの資産膨張先にFRBが09年3月から6カ月間に、中長期の米国債を約3000億ドル買い切ったと書いた。
金融市場を経由し、銀行などから買い入れた米国債は、FRBのバランスシートの借方である資産サイドに計上される。
そして同じ金額分の「通貨(正しくは「頭金準備」)」が「負債」としてバランスシートの貸方である負債サイドに計上され、金融市場に同額分の通貨(マネタリーベース)が供給されるわけだ(図2-5)。
ご存知ない方が多いと思うが、我々が日常的に使用している円紙幣(現金という名の「資産」)は、日本銀行の「負債」なのである(誰かの資産は、誰かの負債というわけだ)。
ちなみに、百円玉などの貨幣(コイン)を発行しているのは、日銀ではなく日本政府だ。
だから、貨幣発行残高は日本政府の負債として計上されているのである。
個人的には、紙幣や貨幣などの通貨は、負債ではなく「純資産」でも構わないように思えるが、昔から負債計上となっている。
例えば不動産などは元々「無価値」な土地に、誰かが値段をつけた瞬間に価値が生まれ、バランスシートの「借方」に資産計上される。
とはいえ、この「価値が生まれた」際に、別に誰も負債を増やしていないので、貸方に対応するのは「中央銀行のバランスシート変遷中央銀行が債権(国債など)を市場から購入した場合の、バランスシートの動き借方貸方借方貸方消中央銀行が紙幣を発行し、国債などの債権を購入することで、借方(資産サイド)と貸方(負債サイド)が同額分増える(結果「バランス」する)産」になる。
同様に中央銀行がお金を生み出した場合、不動産などと同じく「無から価値が生じた」わけであるから、純資産計上して構わないと考えるのだ。
いずれにせよ、いまのところ我々日本国民が日常的に使用している現金(二資産)は、日本銀行(もしくは日本政府)の負債に該当するわけである。
ところでサブプライム危機勃発以降、FRBは09年3月より前から、金融市場の債券(債権)を買い取っていた。
アメリカの金融機関(アメリカだけではないが)は、自社のバランスシートの資産側に、それぞれが巨額のモーゲージ債券(二住宅ローンなどの債権を小口に分け、組み合わせた債券。
いわゆる証券化商品の一種)などを計上し、収益を上げていた。
金融機関はその証券化商品を購入するために、何らかの手段で資金調達している。
すなわち、他者から借り入れたお金で、証券化商品を購入したわけである。
通貨を刷って債券を購入できるのは、その国の中央政府や中央銀行だけである。
それ以外の経済主体が同じことをやった場合、それは普通に犯罪だ(当たり前である)。
金融機関の資金調達は、国民や企業からの預金かもしれない。
あるいは、他の金融機関からの借り入れかもしれない。
いずれにしても、金融機関は調達したお金のコスト(要は金利)を上回る収益を、そのお金で購入した資産から上げる、すなわち運用する必要に迫られるわけだ。
ここで重要なのは、例えば銀行が国民の預金を証券化商品で運用していた場合に、「証券化商品は市場価格(時価)が下落する可能性があるが、預金の価値は変動しない」という点だ。
別に、証券化商品に限らず、市場で価格決定される債券(国債を含む)は、常に時価下落というリスクを抱えている。
無論、逆に市場価格が上昇した場合は、債券からの利子に加え、キャピタルゲインを得られる可能性もあるわけだが。
時価会計上、資産計上された証券化商品などの価格が下落した場合、その差額を損益計算書(企業のフロー)上で損失計上しなければならない。
損失額はバランスシートの「純資産」から控除され(差し引かれ)、資産と純資産が同額分減った結果、バランスシートの左右がバランスすることになるわけだ(図2-6)。
さて、アメリカの不動産バブルが06年にピークアウトした結果、サブプライムローン(信用が低い人向けの住宅ローン)の延滞率が急増した。
この辺りの話は、拙著『ドル崩壊!今、世界に何が起こっているのか?』に詳しい。
数年間は元本払いが免除され、当初わずかな金利だけを返せばいい「オプションARM」つきのサブプライムローン延滞率は、筆者が『ドル崩壊!』を書いていた時点で、20%という高い水準に達していた。
「住宅ローン」の延滞率が2割にも達しているのである。
思わず眩皐がするような状況である(ちなみに、09年9月未時点のサブプライムローン延滞率はさらに悪化し、最新データでは26・4%)。
サブプライムローン延滞率上昇を受け、07年7月10日火曜日、大手格付け機関ムーディーズは同ローンを組み込んだRMBS(住宅ローン担保証券)を大量に格下げした。
いわゆる「ブラッディ・チューズデイ」だ。
この格下げを引き金に、サブプライム危機の火蓋が切って落とされたわけである。
RMBSの格下げは、すぐにCDO(債務担保証券。
RMBSや他の債権を小口に分け、組み合わせた証券化商品)の市場に飛び火した。
CDOの市場価格は大暴落し、全く買い手がつかない状況に陥ってしまった。
これを受け、アメリカや欧州の金融機関は「兆単位」の評価損計上を迫られた。
欧州は、時価会計のルールを変更し、巨額評価損を事実上「隠蔽」するという荒業で、危機を先送りしてしまった。
欧州の国際会計基準審議会(IASB)はリーマン・ショック後の08年10月13日、証券化商品を含めた金融商品の保有区分を「満期日的」に変更することで、時価評価の対象外にすることを可能にしてしまったのである。
アメリカの方は、危機が広がるスピードが速かったこともあり、当初はTAF(ターム資金入札)やTSLF(ターム証券貸出制度)、それにPDCFと呼ばれる窓口融資制度(二FRBから市中銀行への貸し出し)により対応した。
国内の銀行(投資銀行を含む)が保有するRMBSなどを担保に、FRBがお金を貸し付ける制度を拡大したわけだ。
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